リオ五輪感動の影で女子アスリートたちがぶちあたる「生理は敵」の世界…フェアリージャパンも例外ではなかった
摂食障害になった女性たちとの30年余りの交流の軌跡が話題に!
リオ五輪は予想を遥かに上回る盛り上がりを見せました。
日本は史上最多のメダルを獲得。凱旋したアスリートたちはいまバラエティ番組に引っ張りだこのいつもの事態に突入しております。
一方、ストイックな日常生活や厳しい練習に耐え続け、
檜舞台で結果を出すべく全力を尽くしていた女子アスリートたちの笑顔や涙は
忘れることができませんね。
とくに、日本新体操フェアリージャパンの美しさに目を奪われた人は多いのではないでしょうか。
今回は、そんな彼女たちの、演技の裏に隠された「心理と葛藤」をのぞきみたいと思います。
そう、それは女子アスリートにとって誰しもがぶちあたる壁。
「生理が敵」となる世界……。
話題の書『瘦せ姫 生きづらさの果てに』の著者・エフ=宝泉薫氏が、女子アスリートが抱く心理や葛藤を紐解きます。
折れる体と折れない心
実際、交流のある瘦せ姫がこんな話をしてくれたことがあります。高校時代、生理がない生徒 たちが保健室に呼び出された際、全国レベルで活躍する運動部員が一緒だったというのです。
「ともすれば中学生で通りそうな容姿の彼女は〝生理があると体調や気分が安定しなくて練習にも差し支えるので、いりません。以上です。失礼します〟と、颯爽(さっそう)と去っていきました」
また、別の瘦せ姫は中学時代、陸上部で駅伝をやっていて、150センチ31キロくらいのときがいちばん調子がよかったと振り返ります。
「軽ければ軽いほど速く走れるんです、とくに女子は」
というのが、彼女の実感。極論とはいえ、これはフィギュアのジャンプや体操の宙返りなどにも当てはまることでしょう。
そのため、指導者は瘦せることを奨励しがちですし、吐くことを勧めることもあるといいます。また、無月経や月経不順を調子のよさやトレーニングがしっかりできていることのバロメーターにする感覚もあるようです。
しかし、生理がないからといって、競技に有利だとは限りません。骨の新陳代謝に必要なホルモンが分泌されにくくなり、疲労骨折が起きやすくなるのです。
女子マラソンの草分け的存在である増田明美も、こんな回想をしています。
「私も10代のときに、約2年半、無月経のときがあったんですね。でもそれはもう、当然だと思って練習を続けていたんです。そうしましたら、競技生活の後半のほうでは、足に痛みがあることがすごく多くなりましてね、引退した直後に検査をしたら、足に7箇所も疲労骨折があったんですね。それで、65歳の女性の骨密度、骨密度がそのくらいの量だっていうことを言われて、すごくショックを受けたんです」
この発言は、14年に放送された『クローズアップ現代』(註1)でのもの。10代の女子選手の無月経や疲労骨折をテーマにした内容で、彼女はこう続けました。
「でもそれはもう20年も30年も前のことですからね、私のときっていうのは、月経があるようでは、まだまだ練習が足りないっていう、その時代で、今はもっともっとスポーツ医学が発展しているから、こんなことないだろうと思っていたのに、今のVTR見ましたら、なんにも変わっていないということにショックを受けました」